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鍋に工場

農業の労務管理

 農業の労務管理をする上で、最も難解なのが、労働時間の設定です。

労働基準法では労働時間や休日等は適用除外となっているため、

何時間でも、何日でも働かせて良いように見えますが、それは違います。

正しく理解しましょう。

労働基準法の適用除外とは

労働基準法第41条では以下のような定めがあります。

【次の者は労働時間、休憩、休日に関する規定は適用されません。(適用除外)】

1.農林水産業に従事する労働者(林業は除く)

2.​管理監督者/機密事務を取り扱うもの

3.監視業務等に従事し、

   労働基準監督署から許可を受けた労働者

農業の労務管理

労働基準法が適用されない

・法定労働時間(法第32条)

・労働時間の特例(法第40条)

・休憩時間(法第34条)

及び休日(法第35条)

・時間外、休日労働に対する

割増賃金(法第37条)

・年少者の労働時間等

労働基準法が適用される

・深夜業の割増賃金

・年次有給休暇

適用除外は一概に法律の縛りが無いわけではありません。

以下の注意点を押さえましょう。

注意① 労働条件の明示(法第15条)

労働時間の決まりがないとは言っても、労働条件の明示(法第15条)は守らなければなりません。

労働者を雇い入れる際は、
1.労働契約の期間
2.就業場所、従事すべき業務
3.始業終業の時刻、時間外の有無、休憩時間、休日、休暇等労働時間に関すること
4.賃金(計算方法、支払い方法、締め支払い時期)に関すること
5.退職に関すること(解雇事由も含む)


これらを書面により、労働者に対して労働条件を明示しなければなりません。


※「所定労働時間を何時間にしてもよい」、

「休日は1週間に1日与えなくてもよい」と言われていても、

契約上は「1日何時間労働」なのか、「休日は月に何回なのか」

など、あらかじめ決めておかなければならないのです。

なお、2024年4月1日から、労働条件通知書の明示事項が追加改正されます。

労働条件通知書の改正についてはブログで説明していますので、ご参考ください。

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注意② 深夜業の割増賃金

割増賃金が適用除外とは言っても、深夜業の割増賃金は除外されません。

深夜帯とは、午後10時~午前5時間までを言います。
朝、4時から就業となれば、毎日1時間分は割増が発生するということになります。

1時間あたりの基礎賃金を算出する場合には、

ひと月あたりの基礎賃金の額を月間の所定労働時間で割って計算することで求められます。

結果、1日および1ヵ月の労働時間は決めなければならないということになり、【注意①】に

つながってきます。

労働基準法第37条にそって、1時間あたりの基礎額を算出しましょう。

​また、当然に、時間管理が必要になってきますので、

始業終業時刻の管理は必須となります。

タイムカード等で正しい労働時間を把握しましょう。

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注意③ 最低賃金法の適用

​毎年上がる最低賃金。労働時間が長い分、注意が必要です。

例えば、月給を162,000円と定めた場合
162,000円÷(福島県の最低賃金900円(R05.10~))

    =180時間

所定労働時間の最大枠は180時間となりますので、
通常産業に比べると割増賃金の支払いなしに7時間ほどの時間外労働が可能ということになります。

ただし、【注意②】に従い、深夜の割増賃金の支払いは必要ですので、

900円×0.25倍=225円 を1時間当たり、最低でも支払わなければなりません。

朝4時から勤務で1ヵ月25日間働いととすると、
225×25=5,625円 をプラスして支払うことになります。

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注意④ 就業規則と36協定

労働者が常に10人になれば、就業規則の作成届出義務があります。

労働基準法第41条の適用除外には「就業規則の届出」はありません。

​つまり、通常の従業員が10人以上になった場合は、当然に就業規則の届出義務が発生します。

 

技能実習生には36協定が適用されます。

日本人の労働者には36協定の適用がありませんが、実習生には適用されます。

技能実習制度においては、他産業との均衡を図る観点から

➀遵守すること

②労働基準法の適用がない労働時間関係の労働条件について、

   基本的に労働基準法の規定に準拠すること

 

とされています。

そのため、原則として1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならないということになり、

技能実習生に時間外労働や休日労働をさせるには事前に「36協定」の締結及び届出」をする必要があるわけです。

​日本人労働者とは一度も締結したことがないのになぜ??となってしまいがちですので、

注意しましょう!

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